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岡山地方裁判所 昭和34年(ワ)433号 判決 1960年3月31日

本訴原告兼反訴被告 柴田正一

本訴被告兼反訴原告 吉岡武夫

主文

本訴被告は本訴原告のため別紙物件目録記載の家屋につきなされた岡山地方法務局昭和二七年九月九日受付第九、五一三号乙区順位第二番抵当権設定登記及び同日受付第九、五一四号乙区順位第三番賃借権設定登記の各抹消登記手続をせよ。

反訴原告の請求を棄却する。

訴訟費用は本訴反訴とも本訴被告兼反訴原告の負担とする。

事実

本訴原告兼反訴被告(以下単に原告と称する)訴訟代理人は、本訴につき主文中本訴に関する部分と同趣旨の判決を求め、その請求の原因として、

一、訴外田原薫は昭和二七年九月三日岡山地方法務局所属公証人村上則忠作成第二、五七二号担保権設定金銭消費貸借契約公正証書に基き本訴被告兼反訴原告(以下単に被告と称する)より金二〇万円を弁済期昭和二八年八月三一日、利息年一割、遅延損害金月五分の約で借受け、その所有に係る別紙物件目録記載の建物(以下本件建物と称する)に抵当権を設定し、昭和二七年九月九日岡山地方法務局受付第九、五一三号乙区順位第二番の抵当権設定登記をなし、且つ右公正証書において右建物につき存続期間は右借入金二〇万円完済迄とし、賃料は一ケ月金二六、七〇〇円但しその収益が右賃料に達しないときは収益の限度まで賃料を減額し又収益の生じない期間中は無賃料とする旨の賃貸借契約をなし、同月九日岡山地方法務局受付第九、五一四号乙区順位第三番の賃借権設定登記をなした。

二、原告は昭和三一年四月一六日訴外宮崎宗雄と共同して右建物を田原薫より買受けた後、被告に対する同人の借入元本二〇万円の代位弁済をしようとしたが、被告は受領を拒んだので、同月二八日右元本金二〇万円を弁済供託し、被告は右供託金を受領した。

三、被告と田原薫の間に於て右借入金の利息損害金については第一項記載の賃貸借契約に基き被告が賃借人として田原に支払うべき賃料と対等額に於て相殺し、一方その限度に於て被告が本件建物よりあげる収益を取得することにより利息損害金の支払を確保する旨の契約がなされており、被告は右契約に基き本件家屋の収益即ち之を実際に使用している賃借人等から支払われる家賃月額総計二六、七〇〇円(昭和三〇年五、六月頃二九、六〇〇円に値上げ)を右売買成立後である昭和三一年六月末迄取得していたのであるから、前記借入金については利息損害金はすべて支払済であり、前記供託により元本を弁済した以上、債務は完全に消滅したものである。そうすると、右借入金を担保するための前記抵当権並びに賃借権はいずれも消滅したというべきであるから、之等の登記の抹消を求めるため本訴に及んだ。

被告の抗弁に対し

被告主張の如く賃貸借契約を改めた事実は否認する。

と述べた。

被告訴訟代理人は

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

との判決を求め、

一、請求原因第一項の事実は認める。但し、利息は公正証書面では年一割であるが、実際は損害金と同様月五分の約束であつた。

二、同第二項の事実中、弁済供託並びに供託金受領の点は認めるが、その余は知らない。尚、右供託は元本の弁済としてなされたものであるが、被告はこれに対して異議を留め、遅延損害金として受領する旨を通告した上、供託金を受領したもので、単純に受領したものではない。

三、同第三項の事実は争う。

(1)  原告主張の賃貸借契約が本件建物の収益を以て被告の田原薫に対する貸金の利息損害金の弁済を確保するためのものであつたことはその通りであるが、被告の田原に対する貸金は原告主張の金二〇万円の貸金のほか、利息損害金いずれも月九分の約束の金三〇万円(現在残額二八万円)の貸金があり、右収益はこの二口の貸金の利息損害金の弁済に充当せられる約束であつた。

(2)  そこで、被告は田原より借受けた本件建物二棟中事務所一棟二一坪余を田原の使用部分として同人に貸戻し、その賃料を被告が田原に支払うべき賃料と同額即ち月額金二六、七〇〇円と定めることにより、彼此相殺の上、アパートに改装されている残余の一棟工場八〇坪の部屋代収入計金二六、七〇〇円を以て前記二口の資金の利息損害金に充当することにした。

(3)  ところが、右アパート部屋代は昭和二九年一二月までは田原において取立て、同人はその全部を被告に廻さなかつたため、現実に被告が支払を受けたのは三分の一程度に過ぎず、その後は被告において自ら取立てるようになつたが、被告は先ず之を三〇万円の貸金の利息損害金に充当した。而して、昭和三〇年度以降はアパート一六室の中二部屋を田原が旅館として使用するようになつたため此の分の部屋代は減少し、また地代、電燈料、水道料の支払、居住者の立退きに際し返還すべき敷金の立替、部屋代の滞納等もあつて、之等を控除するときは実際に被告の手に残る部屋代収入は金二万円にも達しなかつたため、これ等はすべて金三〇万円の分の利息損害金に充当せられ、金二〇万円の分の利息損害金には全く充当せられなかつた。従つて、仮りに金二〇万円の分に対する昭和二九年末迄の利息損害金が支払済になつているとしても、昭和三〇年一月分以降の損害金は全く支払われていないことになるから、原告が金二〇万円を弁済供託した昭和三一年四月末当時の未払損害金は総額金一六万円に達する。

(4)  そこで、被告は前記の如く原告の弁済供託金を先ず損害金に充当したものであり、右充当が有効であるとすれば、金二〇万円の貸金の元本は未だ完済せられてはいないことになる。仮りに然らずして、元本に充当せられるものとすれば、逆に右損害金少くとも一六万円の債務が残存することになる。従つて、いずれにせよ、基本債務は消滅しないから、これを担保する被告の抵当権並びにその完済を期限とする被告の賃借権も消滅せず、その消滅を前提とする原告の本訴請求は失当である。

仮定抗弁として

一、仮りに係争の金二〇万円の貸金が完済せられたとしても、昭和二七年九月末か一〇月初頃、前記アパート一六室には転借人が入居し、賃借人たる被告に代つてその占有を続けているのであるし、昭和二九年九月一〇日被告は田原薫との間に同訴外人が仮令債務を完済するも被告の賃借権は存続し、賃貸借の条件については改めて協議する旨の特約を結んだので、被告の賃借権は消滅せず且つ之を原告に対抗し得るものである。

二、仮りに被告の賃借期限が満了したとしても、借家法第二条による更新拒絶乃至更新をせざる旨の通知を受けておらず、又之等の通知があつたとしても、拒絶するにつき同法第一条の二所定の正当の事由は存しないから、本件賃貸借は更新せられ、且つ前記の如く占有代理人により引渡を受けているから、原告に之を対抗し得る。

三、而して、右の賃貸借契約は原告主張の賃借権設定登記の原因たる賃貸借契約と基本的に同一のものであるから、それが有効に存続する限り、該登記の抹消に応ずべき理由はない。

と述べた。

反訴につき、被告訴訟代理人は

本件建物につき原告及び訴外宮崎宗雄と被告との間に前者を賃貸人として後者を賃借人とする賃貸借関係の存することを確認する。

訴訟費用は原告の負担とする。

原告訴訟代理人は

被告の請求を棄却する。

との各判決を求めた。

反訴に関する当事者の事実上の陳述は、その趣旨に於て本訴に於ける当事者の各主張につきるから、之を援用する。

証拠として、原告訴訟代理人は、甲第一乃至第五号証、第六号証の一、二、第七乃至第一一号証を提出し、証人田原薫(第一、二回並びに原告本人の尋問を求め、乙第一号証は郵便局作成部分の成立のみを認めて他は不知、同第二、第三、第八、第一〇号各証の成立は認める、その余の乙号証は全部不知と述べ、

被告訴訟代理人は、乙第一乃至第一四号証を提出し、被告本人の尋問を求め、甲第三号証は登記官吏作成部分のみ成立を認めて他は不知、同第四、五号証は不知なるも、その余の甲号証は全部成立を認めると述べた。

理由

証人田原薫の証言(第一回)により成立を認めうる甲第三、第四号証と右証言(第一、第二回)によれば、原告と訴外宮崎宗雄が訴外田原薫から昭和三一年四月一六日本件建物を買受け、同月一八日所有権移転登記手続を完了したことを認めることができる。

右訴外人が、昭和二七年九月三日原告主張の公正証書に基き、被告から金二〇万円を弁済期昭和二八年八月三一日、期限後の損害金月五分の約で借受け、右債務の担保として本件建物に抵当権を設定すると共に、右建物を被告に存続期間は右借入金二〇万円完済迄、賃料は一ケ月金二六、七〇〇円但しその収益が右賃料に達しないときは収益の限度迄賃料を減額し又収益の生じない期間中は無賃料とする約で賃貸し、昭和二七年九月九日右抵当権並びに賃借権の各設定登記手続をなしたことは当事者間に争いがない。而して、右貸金の利息については、原告は年一割を主張し、被告も右公正証書面に於て原告主張の通りであることは争つていないが、証人田原薫の証言(第二回)とこれにより成立を推認し得る乙第一三号証によれば、実際には被告主張の如く期限後の損害金を同様月五分の約束であつたことを認めることができる。

そこで、右借入金債務が完済せられたとする原告主張について判断するに、前記の事実に成立に争いない甲第一号証、甲第八号証、甲第一〇号証(乙第八号証)、証人田原薫の証言(第一、二回)により成立を認め得る甲第五号証と右証言並びに原告本人尋問の結果を綜合すると、(一)前記借入金は田原が本件建物の中工場八〇坪をアパートに改装する資金の一部に充てるためのものであり、田原は昭和二七年九月頃右アパート改装工事をなしたこと、(二)前記賃貸借は右アパートの部屋代収入で右借入金の利息損害金の支払を確保する目的でなされたもので、形式的には被告が田原に支払うべき賃料(部屋代収入と同額)と利息損害金を対等額に於て相殺することにより、被告が転貸人として取得する部屋代収入の中利息損害金相当額については被告の実質的収入たらしめるものであり、之を直截的に見れば、部屋代収入の一部を以て直接利息損害金の支払に充当せしめる手段に過ぎなかつたこと、(三)右賃貸借契約の存在にもかゝわらず、昭和二九年一二月末頃迄は田原に於て右アパートの間借人から部屋代を取立てその中から借入金二〇万円に対する月五分の割合による利息損害金一万円宛を被告に支払つて来たが、昭和三〇年一月頃からは被告自らアパートを管理し部屋代を取立てるようになつたこと、(四)部屋代収入は月額二七、〇〇〇円位であつたが、昭和二九年中田原と被告との間で田原が被告から借りている本件と別の三〇万円の借入金の利息にも右部屋代を充当する旨の契約が成立していたので本件借入金の損害金並びにアパート管理に要する諸費用立替金等を控除した残余はすべて右別口借入金の利息の支払に充てられたこと、(五)以上の如くして後記弁済供託のなされた当時迄の本件借入金の利息損害金は全部支払われていたことを認めることが出来る。

右各認定に反する被告本人尋問の結果は信用できないし、他に右認定を覆えすに足る証拠はないが、尚右の点に関する被告の主張並びに被告提出の証拠について若干の補足的説明をする。即ち、(イ)被告は本件建物の中事務所一棟二一坪余については本件賃貸借の賃料と同額の賃料で田原に対し貸戻したと主張する。成程、前記公正証書並びに登記簿上右事務所を含む本件建物全部が本件賃貸借の目的となつているにも不拘、本件賃貸借後に於ても田原が右事務所の部分を使用していたことは前掲諸証拠により明らかなところであるが、甲第一〇号証や前記(一)(二)に述べたところにより明かな如く、本件賃貸借は本件建物中アパートに改装された工場の部分の収益を目的とするもので事務所の部分については最初から田原の継続的使用を予定していたものと認められるから、前記事実を以て貸戻しを推定する資料とは出来ない。のみならず、そもそも被告主張の如くとすれば、田原は本件建物中工場の部分を無償で被告に貸与したと同一の結果に陥り、被告の支払うべき賃料は原告の支払うべき賃料と相殺せられて、収益はそのまゝ被告の実質収入となる一方、田原の支払うべき利息損害金は何等相殺されず累増の一途を辿る筋合になるが、何人もかゝる馬鹿げた契約を結ぶとは考え得ないし、又右主張は被告自らも認める本件賃貸借の目的とも矛盾している。(ロ)被告は前記部屋代収入を本件貸金と別口の前記三〇万円の貸金とのいずれの利息損害金に充当するかは、債権者たる被告の自由であるとの前提に立つて、先ず以て右別口貸金の利息損害金に充当したと主張する。成程、甲第一〇号証には右充当(形式的には弁済の充当でなく相殺の充当であるが、以下単に充当と称する)の順序については定めるところなく、又証人田原薫の証言によれば、同人として特に充当につきその都度意思表示をしてはいなかつたと認められるが、同証言によれば、甲第一〇号証の作成されたのはその日付の記載に拘らず実際には昭和二九年になつてからであり(之に反する原告本人の供述は信用しない)、また前認定の如く田原は昭和二九年一二月迄は本件借入金の利息損害金額と符合する金一万円宛を部屋代収入から支払つて来たのであるから、之等事実と本件借入金についてのみ賃貸借の公正証書が作成せられ且つ登記がなされている事実並びにそれにも不拘右別口借入金三〇万円に対する被告主張の月九分の利息損害金二七、〇〇〇円に先ず以て充当し得るとすれば、諸費用を控除した部屋代収入のすべてを充当するも足らず、本件借入金に対しては最早全然充当の余地がなくなるという計数的事実とを綜合して考えると、債務者である田原がその都度特に充当につき意思表示をしなくとも、予め包括的に先ず以て本件借入金の利息損害金に充当せられるべき旨暗黙の合意若しくは指定がなされていたと認めるのが相当である。従つて、被告の右充当に関する主張は、その前提に於て、既に之を採り得ない。

次に、原告及び宮崎宗雄が、本件建物を買受けた後、第三者として本件借入金元本二〇万円につき被告に対し弁済の提供をしたところ、被告が受領を拒絶したため、昭和三一年四月二八日岡山地方法務局に之を弁済供託し、被告が同年五月一〇日右供託金を受領したことは当事者間に争いがないところ、前記の如く右借入金の利息損害金は既に支払済である関係上、右元本の弁済供託は債務の本旨に従つた適法のものということが出来るから、右供託金受領が異議を留保してなされたと否とを問わず、右弁済供託により本件借入金債務は完済せられたものといわねばならない。

そうすると、右貸金債権を担保するため本件建物に設定した前記抵当権も消滅するから、被告は原告に対しその設定登記を抹消すべき義務あることは明らかである。

また、之により右借入金の完済迄を存続期間とする本件建物の賃貸借契約も当然期間満了により終了すべき筈であるが、右賃貸借については更に被告の抗弁があるから、之について判断する。

第一に、本件賃貸借契約は昭和二九年九月一〇日債務を完済するも存続することに約旨を改められた旨の被告の抗弁について検討するに、甲第一〇号証並びに田原証言(第二回)により成立を認め得る乙第九号証には、いずれも被告主張の如き合意が記載せられて居り、右は被告主張の頃作成せられたものであると認められるが、前に説示した本件賃貸借の目的内容並びに後に説示するその本質に照すと、右合意の意図とするところは極めて捕捉し難く、右田原証言及び原告本人の供述中此の点に関する部分も不得要領で、その趣旨奈辺に在るか理解に苦しむ。唯一の解釈は、本件貸金が完済せられても、前記三〇万円の別口貸金が完済されない以上賃貸借契約は存続する旨を約したものと見ることがあるが、そうであるとしても、その旨の登記がない以上建物譲受人である原告等には右存続期間の変更を以て対抗出来ない。被告は建物の引渡により対抗し得ると主張するが、登記された賃借権の存続期間は登記簿の記載により決定せられるべきであるから(不動産登記法第一二七条)、被告の右主張は理由がない。

第二に、被告は借家法による賃貸借の更新を主張する。然し、本件賃貸借は、既に述べたように、賃貸借の形式を借りた貸金の利息損害金の充当方法に過ぎないものであり、その本質に於ては賃貸借に非ずして、一定期間に亘る賃料の取立及びその借入金債務への充当権限を含む建物管理権の授与契約であると解される。蓋し、本件賃貸借に於ては、賃貸人にとつて賃貸借契約の要素である賃料の額は不安定であり時には無賃料でさえある反面、賃借人も自己使用又は転貸による利得も予定していない(貸金の利息の支払を受けることは元来貸金自体から生じる収益であつて転貸による利得ではない)のであつて、到底そこに本来の賃貸借意思があるとは認められない。たゞ、前記の如き建物管理権については之を登記する方法がないため、第三者に対して対抗力を持たせるため登記の可能な賃貸借契約の形式を採つたものであると考えられる。本件とは別に、既に債務者が第三者に賃貸中の建物についても、往々にして、債権者に対し本件類似の賃貸借契約がなされる事例を見受けるが、かゝる場合を考え併せると右の解釈の妥当なことも肯定できよう。而して、本件賃貸借契約の本質を右の如く解するならば、之に対し借家法を適用する余地のないことは明白である。また、かく解しても、現実の居住者の保護に欠けるところはない。何となれば、右の解釈によれば、現実の居住者は直接債務者たる所有者と賃貸借関係に立つ訳であり、この関係が借家法によつて全面的に保護せられることはいうまでもないからである。以上の理由により、被告の右抗弁も理由がない。(末尾註)

してみると、本件賃貸借は結局期間満了により終了したのであるから、被告がその賃借権設定登記を抹消すべき義務あることも亦明らかである。

よつて、本件建物の抵当権並びに賃借権各設定登記の抹消を求める原告の本訴請求は正当として之を認容し、右賃貸借関係の確認を求める被告の反訴請求は失当として之を棄却することゝし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して、主文の通り判決する。

(註) 本件賃貸借契約の本質が建物の賃貸借に非ずして建物管理権の授与であるとすれば、本件賃貸借契約は虚偽表示として無効ではないか、従つてその登記は有効な登記原因なく無効の登記として期間が満了すると否とにかゝわらず当初から何時でも抹消を請求し得るのではないかとの疑問がないではない。然し乍ら、此の問題は、例えば譲渡担保に於て債務者が賃借権を登記した場合或はいわゆる名義信託の場合等に於て、登記が無効といえるかということにも関連する困難な問題である。当裁判所は本件賃貸借の如き貸金の弁済確保のための賃貸借契約も、其れが一定の経済的目的を達成するための手段として必ずしも必要且つ相当でないとは断じ得ないし、且つ違法性があるとも考えられないので、その内容については本質に照し借家法の排除等制約を受けるのは当然であるが、形式的には一応有効な賃貸借契約として成立し、従つてその登記も無効ではないと解する余地があるように思う。尤も、いずれにせよ、本件に於ては原告が賃貸借の無効を主張していないのであるから、有効な賃貸借として扱う外はないともいえよう。

(裁判官 胡田勲)

物件目録

岡山市上伊福字蓮田百七拾壱番の拾壱地

同番の弐拾地

同番の弐拾壱地

家屋番号同町四百弐拾八番の四

一、木造かわらぶき平家建事務所 壱棟

建坪 弐拾壱坪五合

一、木造かわらぶき平家建工場 壱棟

建坪 八拾坪

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